社交ダンスを題材とした作品と聞かれたら、皆さんはまず何を連想しますか?
私は1996年に上映された実写映画「Shall we ダンス?」を連想します。実際Shall we ダンス?はヒット作として作品上映後にちょっとしたブームとなり各種メディアで取り上げられていましたが、ブームが去った後はあまりメディアで目にする事が無くなってしまいました。
アニメや漫画においても社交ダンスを題材とした作品はそれほど多くないのですが、今回ご紹介する作品はそんな社交ダンスを題材とした漫画「ボールルームへようこそ」です。
2011年より月刊少年マガジンで連載を開始した本作ですが、極めて高い画力と美しく魅せる演出、そして少年漫画に相応しい熱い展開を兼ね備えたおり、今最も注目されている漫画作品の一つになります。
現在アニメも絶賛放送中で波に乗る本作を、アニメが放送している今だからこそ原作漫画に迫ってみたいと思います。
競技ダンスに魅せられた少年の物語
趣味はなく、将来への夢もなく、ただ惰性のように毎日を過ごしているどこにでもいる普通の中学生・藤田多々良(ふじた たたら)が本作の主人公。
ある日カツアゲにあっている所をプロのダンサーである仙石要(せんごく かなめ)に助けられた事をきっかけに、多々良は今まで知りもしなかったダンスの世界の魅力に取り憑かれたかのように引きこまれていき、同年代の兵藤清春(ひょうどう きよはる)や清春のパートナーであり同級生の花岡雫(はなおか しずく)らに触発され、何も無かった筈の多々良の日常と世界が激変していきます。
本作は、そんなダンスに魅せられた藤田 多々良の成長の物語です。
スポーツ少年漫画の王道
物語の始まりはスポーツ系少年漫画の王道とも言える入りで、無個性だけど無個性である自分が嫌で、そんな自分を変えたいけれどどうしたらいいのか分からず悶々とする中学生。誰にでもある思春期の悩みを照らすスポーツとの出会い。
これだけ書くとどこにでもある作品のように感じてしまうかもしれませんが、2013年のマンガ大賞を『俺物語』『テラフォーマーズ』『暗殺教室』と人気作品達を抑えて2位に入賞した本作がそれだけな筈はありません!
詳しくは次項でw
美しい絵柄と魅せる表現
本作の魅力は『物語の熱さ』と『絵柄の美しさ』と『魅せる演出』の三つであると言えます。
まずは『物語の熱さ』です。
これはスポ根系の漫画特有の熱さといえば伝わりやすいと思いますが、最初は平凡な普通の主人公がライバルやヒロイン達に触発されて隠された才能を開花させていきます。
本作の主人公である多々良は高い観察眼と目で見た動きをすぐに覚えるといった才能を秘めており、初心者でありながらプロや同年代の天才ダンサーの目を奪う成長を遂げますが、その成長速度はまさに少年漫画の熱さ!
細やかな線が織りなす美しい絵柄
作者である竹内友は本作が初の連載作品ですが、2009年のデビュー作から見られた美大仕込みの高い画力は社交ダンスという優雅にして苛烈なスポーツに見事に適合しました。
漫画における絵柄の美しさというのは、それだけで強力な武器ですね♪
『熱さ』と『美しさ』を繋ぐ魅せる演出
社交ダンスにとって『美しさ』とは重要な要素の一つになりますが、その美しさの裏側で社交ダンスは運動量が非常に高いスポーツでもあり、本作の魅力である『物語の熱さ』と『絵柄の美しさ』、そして社交ダンスというスポーツが持つ優雅で苛烈な本質、その全てを繋ぐ演出はコマ割り一つ取っても見事で、本作の魅せられる要素はこの演出なしには語れません。
ちなみに…
アニメ版絶賛放送中!
2017年の夏アニメとして現在絶賛放送中の本作。やはりアニメ化と聞いて一番に気になるのは原作の雰囲気をどこまで再現しているかという点だと思います。「好きな作品だけど、アニメ版は絵柄も変わっていて何か苦手…」となってしまう事も少なからずありますね。
上記のPVを見て頂いても分かるように、本作の雰囲気はかなり再現されていますね。気になる点を挙げるとちょっと首の長さが個人的には気になる所ですが、放送中のアニメを視聴してみると全体的によく出来ていると言えます。
アニメ版はどこまでやる?
アニメ版で気になる所の一つとして、原作のどのあたりまでやるのか? というものがありますが、原作を追い越さない限りオリジナルの終わりを迎えるアニメ作品は少ない為、原作のキリの良いポイントで終わると考えられます。
そう考えると、放送中のアニメのペースと原作の兼ね合いから、恐らくアニメ版は赤城兄妹との話である天平杯が終了するまでが妥当でしょう。
まとめ
一時期作者の体調不良により連載を休止していた本作ですが、月刊マガジン2017年2月号から連載を再開しており、単行本も最新刊の9巻が実に2年近く振りに刊行されるなど勢いは増すばかりです。
現在はアニメ版のラストと予想される天平杯の後のお話で、パートナーも赤城 真子(あかぎ まこ)から性格も正反対な緋山 千夏(ひやま ちなつ)と変わり、多々良も更なる進化を遂げている最中になります。
ファンからしてみれば早く続きを読みたい所ですが、連載しているのが月刊誌なので連載を読むにしても1ヶ月に1話で、単行本は早くても1年に1冊くらいのペースなのでなかなかにじれったくはあるのですが、アニメ版を見て本作に魅せられた方からしてみれば追い付くチャンスでもありますね。
ホールに舞う優雅にして熱く苛酷なスポーツ、社交ダンスを題材とした漫画「ボールルームへようこそ」。読み始めるなら今ですよ!