一昔前なら漫画といったら雑誌かコミックしかありませんでしたが、最近ではネットでも電子書籍としてより身近に漫画が読める世の中になりましたね。作品数もそれに伴い数を増す中で、お気に入りの作品を探すのはなかなかに骨の折れる作業です。
とはいえ数が多いと言ってもまだまだ主流はジャンプ・サンデー・マガジンといったメイン所の雑誌やコミックなのでしょうが、そういったメイン所の影にこそ名作は隠れているものです。
そこで今回はゲームでお馴染みのスクウェア・エニックスが出版している月刊ビックガンガンにて現在連載中で同社のネットコンテンツであるガンガンONLINEでも配信されている人気急上昇の異色ダークファンタジー「ゴブリンスレイヤー」をご紹介したいと思います。
メイン所にアンテナを張っている方はあまり聞いた事が無い作品かもしれませんが、王道のファンタジー作品の世界観でありながらスポットを当てたのは盲点とも言うべきもので、まさに『異色』の名に恥じない傑作ダークファンタジーである本作の魅力をご堪能下さい。
ゴブリンを狩る事のみに命を掛ける男の物語
本作の舞台となるのは魔法やモンスターが存在するファンタジーの王道とも言うべき世界。そこには当然のようの経済があり、金銭のやり取りで生計を立てる人たちがいて、その中の職業の一つとしてモンスターを狩ったりする事を生業とする冒険者達がいます。
冒険者たちは国が運営する管理所『冒険者ギルド』に所属し十種の等級に応じた仕事を斡旋してもらうのですが、本作の主人公はその中でも在野での最高位ともいえる銀等級冒険者になります。
本名は作中で表記されず、ゴブリンのみを執拗に狩り続ける事から『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれる主人公は、在野最高位等級でありながらゴブリン以外に一切興味を示さず、己の全て、それこそ命をも掛けてゴブリンを『スレイ(殺害する)』する姿は一種異様で、淡々とひたすら合理的にゴブリンのみを狩り続ける様は狂気を読者が感じ取ってしまう程。
本作はそんな一人の男の物語になります。
特別な事は何一つ無い
本作の主人公に特殊な能力は何一つありません。
世界的に見ると魔法や特殊技能というのは割と当たり前のように存在しているようですが、本作の主人公は光の勇者様でも無いただの男。ゴブリンを狩る中で何度も練習して技術を磨き、生態を研究し、経験を重ね、ただひたすらゴブリンを狩り続けます。そこに一切の情は無く、子供であってもゴブリンであれば必ず殺します。
そのストイックさは作中のキャラクターのみならず読者さえも異質に覚えてしまうかもしれませんが、ある意味で特別なものが何もないからこそ本作の魅力の一つであるご都合主義の無い非常にリアルな世界観が際立ちますね。
ゴブリンスレイヤーの最大の武器とも言える知恵と想像力。超人では無いまさに『人』の戦い方ですね。
ゴブリンは雑魚では無い
ゲームをする人からしてみれば、ゴブリンといえば序盤最弱の雑魚キャラというイメージが最も多いと思いますが、本作のゴブリンは決して雑魚というわけではありません。
とはいえ本作のゴブリンが他の作品で見られるドラゴンのような強さを誇っているわけではなく、知能や身体能力は人間の子供程度しか持っておらず、単体であれば村の力自慢が1人で討伐できる程度のモンスターになります。
しかしゴブリンの本領は暗闇でも視える視力と優れた嗅覚、そして群れをなす事であり、上位種のゴブリンロードやオーガに至っては上級冒険者でも苦戦するほど。
ファンタジー世界のリアル
ファンタジー世界において冒険者が依頼を受けてモンスターと戦うというのはよくある話です。
例えばゲームにおいて「ゴブリンに攫われた娘を助け出してほしい」という依頼があったとして、無事ダンジョンをクリアすると攫われた娘は無事に助け出せたりするのですが、リアルに考えるとモンスターに攫われて無事である確率はそれほど高くないのでは? と誰もが思う所です。
また、常時モンスターがうろついているのであれば、人知れず襲われて滅んだ村とかもあると思いますし、冒険者の死亡率というのも決して低い数字ではないと考えられます。
本作はそんなファンタジー世界のリアルな部分も目を背けること無く、ゴブリンの行う残虐な行為も細かに描かれています。
画像は載せませんが…
原作は2chのやる夫スレ!?
本作が異色であるのは何も設定や世界観だけではなく、作品化に至るまでの経緯も異色といえます。
漫画版は2016年の2月から刊行されている同名ライトノベルが原作となっているのですが、その原作であるライトノベルは作者が2chのアスキーアート(AA)で作品を表現する、いわゆる『やる夫スレ』で発表していた作品が元になっています。
現在は小説版がやる夫スレ版のストーリーを追い越している為、あくまでやる夫スレ版はプロトタイプとも言える作品ですが、興味のある方は作品を検索すると良いかもしれませんねw
2ch発の作品としては『電車男』が有名ですが、やる夫スレからライトノベルになった本作はやはり一風変わった作品です。
ちなみに…
このライトノベルがすごい! 2017 新作1位!
異色とも言える経緯で刊行されたラノベ版ですが初刊発売数日で重版が決定するほどの人気を博し、初刊の段階でコミカライズも決まっていたといういうのですから、出版社側も本作の魅力に大きな期待を寄せていたのがよく分かります。
そして宝島社の発行するライトノベルのガイドブックである『このライトノベルがすごい! 2017(2016年集計)』において新作1位を獲得するほどの人気作になりました!(全体では5位)
『このライトノベルがすごい!』はラノベを愛読する人はもちろんですが、それ以外の層への分かりやすい指針でもある為、作品の今後を占う意味でも新作1位というのは期待が膨らみます。
まとめ
如何でしたでしょうか?
ダークファンタジーというジャンルは万人受けするジャンルでは無いのですが、通常のファンタジーには無い独特な重厚感を持っている作品が多くあり、本作もまたそんな重厚感溢れるダークファンタジーの名に恥じない作品となっています。
また本作の魅力である主人公ゴブリンスレイヤーのヒーロー感はスーパーマンよりもバットマンが非常に近く、リアルで重厚感のある世界感において狂気にも見える主人公のその兜の裏にある等身大の人間であるヒーロー感は、他の作品でなかなか見られない魅力に溢れていますね。
現在漫画版は2巻まで、そして原作であるライトノベル版は5巻まで刊行されています。このままの勢いで人気を伸ばして行けたならば、もしかしたらアニメ化もあるかもしれない?? なんて事を考えてしまうのは私だけでしょうかね?w
異色ダークファンタジー「ゴブリンスレイヤー」。
もし今回ご紹介した事で皆さんのお気に入り作品の一つになれたのなら幸いです。