人気漫画家唐々煙の代表作品。美麗な作風と心躍るストーリーが好評を呼び、2014年にはテレビアニメ化された。
あらすじ
時は1878年、明治時代。琵琶湖には日本最大の刑務所、獄門処が鎮座する。その監獄の護りを任された曇家の次男、曇空丸は、兄の天火、弟の宙太郎とともに曇神社にて平穏な日々を過ごしていた。
空丸の記憶では、滋賀・近江の空は晴れた試しがない。なんでも近江では三百年に一度空が曇り、それは災いをもたらす大蛇が現れる前兆だとか……。平和な生活から一転、不穏な大蛇の噂を耳にし戸惑う空丸に、兄の天火から衝撃の事実がもたらされる。それはあまりにも残酷で、まだ未熟な青年が負うにはあまりにも重荷であった。
魅力あふれる登場人物
主人公・空丸に加え天真爛漫な宙太郎、豪気溢れる天火という雲三兄弟は、読めば好きにならずにはいられない魅力的なキャラクターだ。また彼らを取り巻く人物も、それぞれの描写が掘り下げられておりついつい感情移入してしまう。
たとえば、曇家に居候の身だという金城白子は、暗い過去を持ちながらも曇家の人々の人情に助けられて生活を続けている。
そのためか曇家のためならば労力を惜しまないような描写が細かく入っているのだ。
初登場の際は少々無愛想に思える人物でも、実は本作一の愛情深さを持っていたり、はたまたその逆も然りである。
自分は安倍 蒼世というキャラクターがあまりに天火に辛くあたるので、なんて心の無い人なんだと憤慨しながら読んでいた。
しかしこの蒼世、読み終わる頃には本当は誰よりも人情深く、義理堅く、一度決めた志は貫き通すという魅力たっぷりの人物へと変化していた!
今ではすっかり、大好きなキャラクターの一人である。
これ以上は盛大なネタバレになってしまうので控えておくが、他にも何人かキャライメージが二転三転した例がある。
奥行きのある登場人物の感情描写が、曇天に笑うの魅力の一つだといえよう。
曇天に”笑え”!!
曇天に笑う本編の名ゼリフである。
濡れ衣によって処刑台に向かう天火が彼の処遇を嘆く人々全員に向かって叫んだ言葉だ。
これは単行本3巻に収録されているのだが、まだこの段階では話の全貌は分からない。
最終話まで読んで初めて理解できる、すべてをなげうって曇りを晴らそうと奔走してきた天火が笑うというこの場面は涙なしには読めなかった。
全6巻からなる曇天本編の最初の山場であり、ここからが本当のスタートである。
この場面が終わってから空丸の新たな出発と苦難の日々が始まるわけなのだが、そこを読んでもやはりこのセリフを叫んだ兄の偉大さ・強さをひしひしと感じる。
シリーズ超大作
本編1巻の中に曇天から600年前の話となる泡沫に笑うが収録されており、さらに現在連載中の煉獄に笑うという作品もおすすめだ。
こちらは曇天から300年前のお話で、曇天の先祖達がたくさん登場している。
全シリーズ合わせると
泡沫 → 煉獄 → 曇天 → 曇天外伝
の時間軸で楽しめる。
どのシリーズも人物が個性的で、自分は今連載中である外伝と煉獄の続きを今か今かと待っている。