ミリタリー萌えについて、『ストライクウィッチーズ』について書かせていただいたのですが、今回はそれに続く、そしてこの後の「艦これ」に受け継がれるミリ萌え作品『ガールズ&パンツァー』を語りたいと思います。
ガールズ&パンツァーへの歴史
ミリ萌えという分野は、ミリタリーの知識に興味がない人にはまったく受けず、死屍累々を築いてきたのですが、MC☆あくしずという雑誌が「売れるミリ萌え」を出すべく、ミリタリー作家の総力を結集、ディープな人からライト層まで幅広くカバーする作品群を送り出し、その中で協力に後押ししたのが『ストライクウィッチーズ』でした。
⇒[内部記事:ミリ萌え! 艦これまでに至る数少ない成功作【ストライク・ウィッチーズ】]
『ストライクウィッチーズ』は、とにかく王道展開とあざとい演出、派手な戦闘シーンをハイペースで叩き込むかたわらに、ちょこちょことミリタリー要素をまばれこませ、アニメ好きの世間に受け入れられるだけのおもしろさと同時に、「ミリタリー」というものに対する敬遠を少しだけ取り除くことに成功しました。
そして、この『ガールズ&パンツァー』で、「ストライクウィッチーズ」が穿った穴を広げ、よりミリタリーへの興味を持たせつつ、やはり「受ける」パターンは堅持して、さらなる成功を収めた作品といえるでしょう。
この作品や『ストライクウィッチーズ』、またその他のコレクション嗜好や無課金でもけっこう遊べるという要素などによって、『艦これ』ゲーム版は、当初5万人ユーザーが集まれば損益分岐点とされていたところに200万のユーザーが集中、グッズ展開は膨らみ、巨大なコンテンツに成長しました。
しかし、これもまず「ミリタリーと萌え」というジャンルがそこに「ある」そして「面白い」と気づかせてくれた本作の功績が大きいと思っております。
「艦これ」は、企画段階では、前2作と連動したものではないのですが、空・陸…次は海ということで、狙ってきていた感はあります。
こんどは戦車だ! 重複するスタッフと連動性
『ストライクウィッチーズ』で戦闘機のネタを披露したスタッフが次に取り上げたのは戦車でした。
空の次は陸と、ある意味できすぎのようですが、それもありなん。
監督こそ違えど、多くのスタッフがこの2作品ではかぶっています。
作品の顔とも言うべきキャラクター原案は相変わらず島田フミカネであり、実質、このスタッフが作る第二弾(ストライクウィッチーズは二期がありましたが)といっても過言ではないと思われます。
無理があってもゴリ通すストーリー
「世界に羽ばたく人材を育てるため」とかいうよくわからない理由で、なぜか空母の上に学校が建てられている以外は、今とわらない現代日本。(ちなみに主人公の母校「大洗女子学園」は、翔鶴)
華道、書道、茶道にまじり、「戦車道」なる珍妙なものが、淑女のたしなみの一つとして推奨されているという、のっけからひっくり返る設定で始まるのですが、どちらかというと日常系とといっていいかもしれない学園モノという受ける要素にミリタリーを乗せるため、ちょっと最初だけ無理した感じです。
しかし、主人公5人の他、ちびっ子ツインテール生徒会長をはじめ、とことんあざといヒロイン達を繰り出してこれを突破。
視聴者に「まあこれはそういうアニメとして割り切ろう」
という気にさせてしまったところは、「何を描きたいのか、何を見せたいのか、手段は選ばん」というスタッフ側の勝ちというところでしょう。
選択科目「戦車道」をとらざるを得なくなってしまった主人公西住みほは、戦車道の家元である西住流の次女。
ある一件から、戦車道に背を向けることになった彼女は、選択科目に戦車道がないという理由で入学した学校で長らく友人もいない毎日だったけど、そんな彼女に声をかけてくれる友人もでき、順風満帆の学園生活が1年遅れでようやくスタート、と思いきや、生徒会長によって、復活した戦車道に無理矢理引きずり込まれてしまう。
最初はとまどっていたみほだったが、戦車道のクルーとして新たに加わった友人もでき、また、同じ学校の別チーム(違う戦車に搭乗)との交流も増し、青春戦車日常系学園リアルバトルアニメ(ホントなんだこりゃ)が始まることになります。
もちろん、萌え要素もふんだんに盛り込まれているので、イイ感じに観れるかもしれません。
より深くなったミリタリー要素
とにかくもう、戦車に女の子を乗せてしまったので、押さえるところだけ押さえればあとはやりたい放題なのですが、それにしても搭乗する戦車が渋い! 実に渋い!
4号と3突は、まあ人気車種としても、89式にM3に、38(t)デスカ……ソウデスカ……
その後も主人公チームに追加されるのはルノーbisだったり「ポルシェ」ティーガーだったり(タイガー戦車と同時期の戦車だったが、動力を電動にしたりいろいろやらかして大失敗作となったポルシェの黒歴史)、なんというか……
しかし、そこはクルーの中に一人、ミリオタを混ぜておけば大丈夫。
(いらない)知識が増えるよ、やったね!
なにより秋山ちゃんが可愛い
そのミリオタクルーこと秋山ちゃんの可愛さはもう、悶絶ものです。
戦車が好き過ぎて(子供の頃の髪型のせいもあって)友達が一人もいなかったのに明るく元気いっぱい。
部屋に入ればポスターには「俺のケツをなめろ!」というセリフで(ミリオタには)有名な漫画「黒騎士物語」のバウアー大尉。
その上には、同じくバウアー大尉ながらピンク髪の女の子のポスターがありますが、これは雑誌「MC☆あくしず」にて連載中の「枢軸の絆」という、これまたディープすぎる戦史解説記事のマスコットでねこの作品とあくしずの距離をうかがわせます。
日常の隙間隙間に、登場する戦車に、「ストライクウィッチーズ」よりもよりプッシュして来るこれらのミリタリー要素に対して、ふんわりとしたお気楽系の展開と登場人物が配置されているため、視聴者で、別にミリタリーに興味がない人でも
「ミリ萌え!そういうのもあるのか!」
とゴローさんばりに興味を抱かせることに、いくぶんかは成功していると思われます。
なにはともあれ、秋山ちゃんがとても可愛いので全てはOKなのです。
戦車描写のフェティシズム
いろいろとミリ萌えについて語ってきましたが、このアニメ、単純に戦車アニメとしても、出来がスバラシイです。
というか、作画のこだわりが、アタマおかしい(ほめ言葉)レベルです。
- 走行中の転輪の動き
- サスペンションの描写
- バックファイアの描き方
- etc……
興味なかった人はおろか、戦車好きの人にすら「へえ、こういうふうに動くものなのか」と感嘆することうけあいで、戦車がただのハコではなく、飛行機や船と同様に、様々なギミックを持ち込んだ「メカ」であることに気づかせてくれます。
そして、艦これへ
本作品が「ミリ萌え」を盛り込みながらもヒットしたことは、大洗への聖地巡礼などを呼び込んだことからも明白で、ようやくミリタリー萌えというジャンルが、アニメ界隈に認知されることとなりました。
『ストライクウィッチーズ』から4年。
MC☆あくしず創刊から6年、着々と、ミルタリー趣味のアニメが世に出され、一方で「蒼き鋼のアルペジオ」などもヒットしました。
そして、「艦これ」ゲーム版が、「これを機にミリタリーに興味を持って欲しい」という制作者側の意図に呼応するように、ニコニコ動画などでは空母の基礎知識や戦史解説動画も上がるようになりました。
アニメ「艦これ」は、早々に第二期の制作が決定されましたが『ガールズ&パンツァー』も、『ストライクウィッチーズ』に続いて劇場版が公開。
まさにミリタリーとアニメの黄金時代が到来しております。
この時代が今後衰退、消滅するのか、それとも、宇宙開発モノがそうであったように、確固としたジャンルの一つとして残るのか、それは健在のところ「艦これ第二期」にかかっているといっても過言ではありません。
しかし、陸・海・空とやったからといって、別の作品を作ってはいけないわけではありません。
潜水艦、現代戦、ゲリラ戦、いろいろとまだそこまで手垢の付いていない(かわぐちかいじが潜水艦とイージス艦&太平洋戦争やりましたが)ジャンルは山ほど残っているので、結集したミリ萌え作家の方々には、がんばって欲しいところですね。