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元祖哲学アニメ【serial experiments lain】とは

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この作品は、Windows95によってインターネットが加速度的に普及した1995年から3年後、1998年に発表されました。

今でこそ珍しくない、『書籍・コミック・アニメの同時進行』というメディアミックスがなされた恐らく最初期の作品で、後に『NieA_7』や『灰羽連盟』『ですぺら』『TEXHNOLYZE』などで原作・キャラクター原案になどで活躍し、現在は不思議なモノが見える少女の日常を描いたまんが『リューシカ・リューシカ』を連載中の安部吉俊が、キャラクターデザインと書籍のイラストとテキストを手がけています。

まだ私たちが、ネットとどう向き合っていけばいいのか手探りだった時代(それは、今現在も同様かもしれませんが)に、ネットワークと自己いうものを哲学的に捉えた意欲的な名作です。

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現在に至るも、ファンの間では様々な解釈・考察が試みられているアニメです。

そんなマイナーな作品を今回はご紹介していきます。

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『serial experiments lain』のあらすじ

世界観は現代と同じ世界で、人々は情報ネットワーク『ワイヤード』にアクセスしメールやコミュニケーションをとっていた。

使用するツールはパーソナルコンピュータではなく、『NAVI』と呼ばれる端末であり、ヘビーユーザーはパーソナルコンピュータ同様、ハイスペックの『NAVI』を自作する。

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内向的な少女:岩倉玲音は、ある日自殺したはずの旧友からメールを受け取る。

玲音が旧友に「なぜ死んだのか」と問うと、「ここには神様がいる」と答える。

その日を境に玲音は、不思議な幻覚を見るようになった。

また、玲音の友人達は玲音の知らないところで服装も性格もまったく違う、別の『レイン』を見たといい、やがて玲音は現実とワイヤードの狭間で様々な出来事に遭遇する。

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それらの出来事を通して様々なことを知った玲音は、やがて本当の自己の存在すら不確かなものになっていき自らの驚くべき正体を知る。

という感じの物語なのですが、はっきりいって難解極まりありません!

初回でストーリーを把握するのは困難で、2週目でようやく概要を知るくらいでしょうか。

アニメによる実験

serial(連続) ・experiments(実験)のタイトルが示すように、このアニメは非常に実験的な作品でした

まず、全体を俯瞰するストーリーがほとんど見えません。

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主人公である岩倉玲音の視点でのみ作品が広がっていくため、背後で動いている物語・事件に関して視聴者はつかめません。

全ては玲音と同じ視点から、玲音と同様の疑問と戸惑いを感じる構成になっています。

視聴者は、余分な、いわば玲音が知り得る以上の情報を知ることは出来ないため、玲音が自分が何者なのか知ったときの驚愕や喪失感は、そのままそっくり視聴者にフィードバックされます。

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作中には、ワイヤードで暗躍するハッカー集団や神を名乗る者の存在などがストーリーの骨子として登場しますが、実のところそのへんはこの作品の主題からすると些末なことですらあり、それもまた、このアニメの独特性を担保する要因となっています。

 

コンピューター専門用語の活用

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メインのスタッフ全員が、当時としてはかなりコンピュータに詳しかったこともあり、現在でも多用される用語

『プロトコル』『デバイス』『アプリケーション』などが頻繁に出てきます。

※IT用語です。

これらの用語は、1998年当時としては、コンピュータに係わりのない一般人にとっては宇宙言語のようなものであり、今現在のように陳腐化も簡略化もされない概念でした。

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これらの専門用語に、うまく作品世界の定義や主題を乗せており、これも当時としては新しいことでした。

言い方は悪いですが視聴者が専門用語の意味がわからないのをいいことに、それぞれの用語に作中独特の意味を持たせることで(定義としては字の如くですが)この難解な物語をうまく説明していたな。という感じです。

アニメーションによる自我と自己の哲学

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ストーリーそのものは、ネットに発生・存在する人格という意味で『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』と同系統の物語なのですが、この作品で視聴者に対して常に問いかけられるのは

  • 『自分』とは何なのか
  • 他者が見ている『自分』と、己自身が認識している『自分』とは同じ者なのか
  • あるいは別の存在なのか
  • 何を以て『自分』という定義がなされるのか

ということです。

観測者がいてはじめて存在が定義される。というのは量子力学における、いわゆる『シュレディンガーの猫』の命題ですが、観測者が『自分自身』である場合なんともそれはあやふやで不確かで

いっそ他者が観測する『自分』のほうが確かなのじゃないだろうか

とすら考えさせられます。

ここまでとことん一つの命題を突き詰めた哲学アニメは、他にはなかなかないと思われます。

何かの命題に対して頭と感性を総動員してみたいと思っている方に一種のパズルに挑戦するような知的実験を、このアニメは提供してくれることでしょう。

逆に、決して気楽に楽しむ類のものではないので、そういう人には同じ安部吉俊原作のスットコ宇宙人と極貧浪人生のドタバタ物語『NieA_7』あたりをお勧めしておきます。

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