テレビアニメ

安部吉俊作品【NieA_7】の個人的評価と考察

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"安部吉俊"という作家には、とても強い思い入れがあります。

元々は同人のイラストレーターから出発した彼ですが、

アニメ『serial experimants lai』『灰羽連盟』『NieA_7』『TEXHNOLYZE』『ですぺら』

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などのキャラクターデザインと原作・構想に深く関わり(『灰羽連盟』は、元々は彼の同人誌が初出)手がける作品全てが、他の誰にも見られない独特の世界観を作り出してきました。

どの作品も大ブレイクすることはないものの固定のファンは確実についていき、カルト人気とはまた少し違った実績を築き上げて来ました。

彼のイラストで描く世界は、美麗であり・退廃的であり・陰鬱であり・詩的でありとても魅力的なのですが、こと漫画となると、途端にスットコなギャグが展開されます。

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現在、ガンガンONLINEで『リューシカ・リューシカ』を連載中ですが、それ以前に連載されたまんがとして『NieA_7』がありアニメにもなりました。

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ここではそのアニメ『NieA_7』について解説していきたいと思います。

いわゆる「居候もの」と呼ばれるジャンルで、ドラえもんを始めとする、一般人の主人公と異質な同居人の物語です。

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『NieA_7』のあらすじ

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東京都荏ノ嶋区・荏の花地区に宇宙人が飛来してから何年も経ち、人間は宇宙人の存在にすっかり慣れてしまい、宇宙人達もまた日本の社会に根付いている近未来。

茅ヶ崎まゆ子は、かつて父親が経営していた銭湯「荏の花湯」の二階に下宿する貧乏予備校生。

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彼女の部屋には宇宙人としては最下層である「アンダー7」である同居人のニアがおり貧乏な受験生活の中、主に食糧確保を巡ってドタバタした日常が繰り広げられる。

受験を控えた思春期特有の不安感や焦燥感を経験しながら、ニアや他の友人・知人たちとの関わり合いの中で、まゆ子は少しずつ前へ進んでいく。

宇宙人達

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宇宙人達は、外見は人間とほぼ変わりません。

唯一異なるのは、頭に変な形のアンテナ(付け外し可能)を刺していることぐらいなのですが、どいつもこいつも変なやつだらけで

偽中国人ぽい者・異様に顔が大きいエセインド人・タレントとして芸能界で活躍するイケメンなどなど。

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普通の宇宙人も多く、子供達はまったく日本人の子供と変わりがありません。

彼らは行政で保護され、その社会的貢献度からランク付けがなされています。

まゆ子の同居人ニアは、その最低ランク「アンダー6」より更に下の「アンダー7」にカテゴライズされています。

また、ニアは他の宇宙人達とは異なり、アンテナを持っていません。

ニアの行動は浮浪者じみたもので、日々食糧確保のためにゴミ捨て場から持ち出した屑鉄を売ったり・パン屋でパンの耳をゲットしたり・酷いときには猫と一緒に魚泥棒までする始末…。

ニアのライフワークはUFO作りで、ゴミ捨て場から持ち帰った様々な資材で作成します。

ただでさえ狭いまゆ子の部屋を埋め尽くすようなUFOを作っては爆発させます…。

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一部の宇宙人達は「荏の花宇宙人会」なるコミュニティを形成しているのですが、メンバーにはロクな奴がおりません。

ファミレスでバイトするカーナは宇宙人の地位向上と荏の花地区の再開発を目指しています。

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メンバーの中では一番意識が高いものの、やってることは皆と一緒のアホ活動のみ。

荏の花初のコンビニ「AM11PM7」(ツッコミどころ)を経営するチャダは、インドかぶれの胡散臭さ爆発宇宙人で、コンビニ経営の傍ら荏の花湯のライバル銭湯を建設して『使ってはいけない草』を香料に使用して後ろに手が回りかける始末で、日々人に迷惑をかけています。

 

見どころ!主人公たちのキャラクター

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話としては

  • 地球人とは少しズれた感性を持つ宇宙人達のしでかすトラブルのライン
  • ひたすらに貧乏なまゆ子とニアのいじましい日常生活のライン

があります。

他には、まゆ子の思春期後期ならではの他者との関わり合いについての悩みなども。

浪人生まゆ子は、貧乏の中バイトと勉強を両立させながら暮らす、ひたすらけなげ・真面目で、いい娘さんです。

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反面、天真爛漫でデタラメなニアに対してだけは激しいツッコミ役となり貧乏故に、食料に対しては異様な執着を見せたりもします。

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まゆ子はニアに対してのみ見せる本性を、他人に対しては恥ずかしく思って隠してはいますが、よくボロがでます。

もちろん、他の人は皆まゆ子がいい娘なのを知っているのでそれを気にとめたりはしないのですが、この「世間体を気にする」様がとてもおかしく、また人間の感性として現実感もあり、日常モノのアニメでは突出したキャラクターとなっています。

その貧乏っぷりは歴代アニメでも最高レベルで、ほとんどの話で「食料問題」が関わってきます。現代の東京のはずなんですが……

アニメよりもひどいのはまんが版で、紅茶のティーパックは使用したら吊して乾かし、何度も再利用(さすがのニアすら「こんなただの色のついたお湯が飲めるか!」と激高)

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あげくの果てには、倒れて動けなくなる始末。←理由が栄養失調。

「最近若い女性に多い。無茶なダイエット、偏った食生活」と医者から説教を食らいますが、「すみません、私貧乏で、本当に食べ物が無くて……」とうなだれるまゆ子に、医者も往診料を「いただけません」と辞退してしまいます。

まゆ子は岐阜県出身なのですが、かき氷には先祖代々酢醤油をかけるそうで……本当ナンデスカ?>岐阜県の方々

一方のニアは、ひたすら食い気(まゆ子もですが)、とにかくいつも腹を空かせており、二言目には「メシ食わせろ」とのたまいます。

まゆ子とニアの間には「自給自足」の不文律があるようなのですが、互いにゲットした食料はシェアします。

もっとも、肉類などの高額・高栄養価食品の場合はゲットしたほうが優先権を主張しますが、ニアはそのへんの雑草を持ち込むこともある一方で、なにげに食料のゲット率は高かったりします。

貧乏生活をここまで描ききった作品は珍しいのですが、ここまで極端ではないにせよ貧乏学生なんて皆こんなものなのではないかな?と感じさせられます。

学生生活を送ったことのある人なら多かれ少なかれ、二人のドタバタに深く共感させられるのではないかな?と思います。(私も学生時代、食べ物に困って栄養失調になりかけたことがあります)

また、まゆ子が住む銭湯「荏の花湯」は常に経営危機にあり、現在の経営者であり、まゆ子の大家でもある言実が、経営改善のため日々アイデアを捻るのですが、これにまゆ子とニアも巻き込まれていきます。

巨大UFO「母船」

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物語を通して常に背景に映っているのが、おぼろがかった巨大なUFOです。

これは、かつて宇宙人達が地球に飛来したときに乗っていた母船と言われているのですが、宇宙人達は誰も覚えていません。

もしかしたら宇宙人達の世代交代が進んでいるからかもしれませんが、大学受験に「宇宙人枠」が設けられたのは1年前のことなので、このへんはあやふやです。

日常とは別に、全体としての物語はこのUFOから発せられる電波を、なぜかアンテナを持たないニアだけが受信することで進んでいきます。

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といっても、結局その正体もあやふやなまま終わるのですが続いてきた日常と、これからも続く日常の間に挟まったエピソードの一つとして、安部吉俊独特の世界観を成り立たせています。

なぜUFOの発する電波をニアだけが受信できたのか、いろいろと考察はあるのですが、私は「深く考えない」ことを選択しました。

それを解き明かすことは本作の主題ではなく、ただニアという少女の不可思議さにちょっとしたフレーバーとなればよいという程度だったのではないでしょうか。

懐かしく、切ないレトロな風景

この作品の部隊は近未来なのですが、かといってテクノロジーが発達した世界というわけでもなく、さらに舞台となる荏の花地区は「再開発に取り残された場所」でもあることから、むしろ昭和の懐かしい風景が広がっています。

物語は夏の一季のみで、初夏から晩夏にかけてのノスタルジックな町並みや人々の営みが、ギャグパートの中にうまく溶けるように織り込まれており、どこな切なくすらあります。

終盤、挿入歌が流れるシーンでは晩夏の古びた街が歌とともに丹念に描かれており、とても懐かしい気持ちにさせられること請け合いです。

OP主題歌と挿入歌『SION』

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この作品のOPは、これまた知る人ぞ知るミュージシャンであるSIONの『ここまでおいで』

また物語終盤に入る挿入歌『影』、イメージアルバムにのみ収録の『Near』は全て書き下ろしです。

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SIONという人はマイナーなのですが、長い活動歴から固定ファンもそれなりにおり、何より同じミュージシャンや芸能界にファンが多いことで知られています。

有名なところでは福山雅治が彼の大ファンで、SIONの曲をカバーしたり(SORRY BABY)、SIONとの共演を熱望してそれが叶って大喜びしたりしたことがあります。

SIONの真骨頂は、切なくも美しい歌詞と、しゃがれたボイスです。

本作のために書き下ろされた3曲いずれも、この作品の世界観と見事にマッチした名曲なので、これを機会にSIONの曲を聴いて欲しいなとも思います。(二十年来のファンなのです)

 

とにかくオススメ!

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『serial experimants lai』は、深くて難解な哲学的アニメでしたが、『NieA_7』の方はスットコてドタバタした日常生活の面白さが前面に出ており、気楽に見られると思います。

それでいて、よくある日常系のアニメとも異なり、独自の世界観がどこか懐かしくも切なく・雰囲気アニメとしても秀逸な逸品となっています。

多分に私の個人的感想がだだ漏れで恐縮なのですが、放映終了からこんなに長い時間が経っても、ふと観たくなることがある作品が心の中にあるのって、幸せなことだと思うのです。

読者の皆様にも、それぞれに「大事な作品」を見つけて欲しいと思いますし、もしかしたらこの作品が誰かの「大事な作品」になることを願っております。

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