虚淵玄の原点【Phantom~Requiem for the Phantom~】を語る!原点はハリウッド?

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虚淵玄と言えば、『魔法少女まどか☆マギカ 』で一躍有名シナリオライターの仲間入りをした新進気鋭の作家なのは、誰しもが知るところでしょう。

また、アダルトゲーム制作会社「ニトロプラス」のシナリオライターとしても活躍、手塚治虫作品のオマージュ「沙耶の唄」は評価が高く、ゲーム発売の2003年当初から、知る人ぞ知る、といった人材でした。

虚淵玄の作風と言えば、シリアス、かつ、容赦がない、救いがない、といった展開が目立ち、「Fate/Zeo」においても、本編では人格者として印象強かった衛宮切嗣を、理想のためならどんなことでもする外道として描き、ファンを驚かせました。

さて、その虚淵玄の処女作が、ゲーム【PHANTOM OF INFERNO】なのです。

『PHANTOM OF INFERNO』の概要

このゲームは当初アダルトゲームとして販売されましたが、濡れ場といえば、死にに行く寸前に差し込まれる、必然性のあるベッドシーン程度のものなので、正直こんなのより過激なベッドシーンが入っているハリウッド映画は山ほどあります。

実際、ゲームが予想外の好評を博した後は、すぐに音声入りのDVD版(通常のDVDプレーヤーでブレイ可能)が販売され、

ベッドシーンは暗喩される程度になってしまいましたが、それゆえに映像作品としての完成度が高くなり、後のアニメ版へと引き継がれていきます。

ハリウッドそのまんまのストーリー

アメリカ旅行中に暗殺現場に出くわしてしまった少年が、殺しの潜在能力を買われ、記憶を消去された後、殺し屋になる。

犯罪組織「インフェルノ」随一の殺し屋「ファントム」、第二の相棒として成長し、初代ファントム「アイン」が裏切りを強いられ逃走後は、主人公自身がファントム「ツヴァイ」となり、殺しに明け暮れる毎日を送る。

しかし、良心までは捨てがたかった彼は初代の「アイン」ほどに心を殺して冷徹になりきることができなかった。

マフィアの抗争に巻き込まれた少女「キャル」を見捨てることができず、「暗殺者としての素質がある」と、かつて自分が言われた言葉を方便として使い組織から守り、彼女の死んだ家族の復讐を引き受ける。

組織への言い訳のためにも、キャルに銃器の使い方や暗殺、狙撃の方法を教え

……てこれ「レオン」じゃねぇか!
てか、メインストーリーで戦いに赴くときの立ち回りとか「男達の挽歌」だし、どこまでハリウッドのハードボイルド好きなんだよ、と。

随所に見られる演出には『ジョン・ウー監督』へのオマージュが散りばめられているし、その後「沙耶の唄」で手塚のオマージュやったのと同様、この人の出発点は、名作への愛あふれるオマージュが原点のようです。

 

それでもかっこいい、分かっていてもかっこいいファントム

いや、ハリウッド映画の、特に質の高い作品というのは、いわゆる「面白い方程式」がきちんと完成されているので、それを守りつつオリジナル要素を出していけば、名作になるに決まってるんですよね。

(死ぬまでそれができなかったエド・ウッドみたいな人もいるけど、あと「アルバトロス」配給の映画なんかはわざと方程式ぶっ飛ばしてB,C,Z級映画を量産してますが…)

つまり、名作をモチーフにしつつそれを料理する技量が極めて高いのが、「虚淵玄」という人の本領で、やがてそれらで培ったオリジナルの作風を育て、後の「Fate/Zero」や「小説版ブラック・ラグーン」へと引き継がれていきます。

『ファントム』も、主人公「ツヴァイ」の、人殺しへの葛藤や、心を殺すことで人殺しに耐えていた「アイン」の儚さ、「ツヴァイ」に養成され、思わぬ天賦の殺人技術を身につけてしまい人格がねじくれまがってしまった「キャル」こと「ドライ」の、最後の最後に見せた涙など、方程式通りに面白いものが見たければ、これを見ろ、てな具合です。

方程式は、決して悪いモノじゃないんですよ。

他にも、組織の中で隠した野心に身を焦がす「クロウディア」や、彼女の相棒で、作中唯一の「まとも」なマフィア「リズィ」など、好人物が目白押しです。

もし貴方が、

  • 銃が好き
  • ハリウッドが好き
  • ジョン・ウーが好き
  • ジャン・レノが好き

なら、こいつは見なくっちゃ!

もうとにかくカッコイイ悲しい、でも最後は心から笑顔になれる、そんな素敵なアニメになっています。
ラストシーン、「アイン」こと「エレン」の言葉と笑顔には、もうそれまでの「タメ」が長かったぶん、最高に心を打たれます。

いやー、しんどかったけど、悲しかったけど、おもしろ辛かったけど、見てよかったなー、と。
初回ゲーム販売以来長年つきあい続けたこの作品ですが、このアニメをもって完結。

コアなファンにとっては大事な作品だったゲーム版を忠実に再現した『Phantom ~Requiem for the Phantom~』は、ファン一同、納得の仕上がりとなりました。

どっかで聞いたような台詞回しと、どっかで聞いたことのあるようなシチュエーションを、どっかで聞いたことのあるっぽい、でもまだ見たことのない活劇で見たいハリウッド中毒患者は、ぜひご覧あれ!

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