知る人ぞ知る、時代劇アニメにおける珠玉の逸品。
それが『サムライチャンプルー』です。
監督は「カウボーイビバップ」の渡辺信一郎。
「カウボーイビバップ」で高い評価を受けた秀逸でスタイリッシュなセンスが、本作でも光ります。
そんなマニアックかつ独特のセンスで面白いアニメ『サムライチャンプルー』をご紹介します。
目次
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サムライチャンプルーとは?
まず最初に、これは江戸時代を舞台にした時代劇ではあるのですが
「考証?知ったこっちゃねえ!」
とばかりに第一話ののっけからフッ飛びまくります。
江戸時代の刑場が映し出されて画面に「一日前」のテロップが流れると、そこは突然現代の町並み。
車が走って、イヤホン聞きながら踊り歩きしている若者が映り、そこから巻き戻しを初めて一気に江戸まで。
高速で回るフィルムに、昭和、明治の櫻木町駅なんかが移り込んでいます。
このシーンだけで「この作品面白そう」となる人が大量発生したことでしょう。
第一話から開始1分から、客の心をわしづかみです。
⇒[BANDAI CHANNEL:無料視聴「サムライチャンプルー第1話」]
その後も全25話が展開される中で凄いのが
- 金髪ピアスのチンピラはでるわ
- 音楽はラップだわ
- 片手で刀を振り回すわ
- ブレイクダンスはするわ
- ボイパするわ
- etc……
衝撃ですw
しかし、これに面食らうことはあっても「時代劇なのにこれはない」と思う人を少数派に押さえる仕掛けがちゃんと第一話で打たれています。
開始直後のテロップにて
「この物語はフィクションです。実際の歴史とは異なる部分がありますが、」
ときて
「ガタガタ言うな 黙って見やがれ」
とどでかく大見出し!
はい、ガタガタいいません。
黙って見やがりますよ、もう。
こんな面白そうなことされたんじゃあ。
『サムライチャンプルー』のあらすじ
町娘少女「フウ」が働く茶屋で代官の息子のチンピラ集団が暴虐武人に振る舞っているところに現れたのは、風変わりな人相の悪い男、ムゲン。
「だんご50個であいつらを片付けてやる」
とフウにもちかけ一度は断られるものの、転んだフウがチンピラにお茶をかけてしまい、あわや指を切り落とされる寸前に。
「だんご100個!」
フウの言葉に、ムゲンはまたたく間に数人を斬り殺す。
一方、別の場所。
籠に乗った代官に工事の打ち切り中止を嘆願する大工が、なけなしの賄賂を差し出すも、額が各少なく代官は護衛に手打ちを命じる。
「邪魔だな、通れんぞ」
現れたのは痩身の侍、ジン。
これまた、またたく間に代官の護衛、柳生の手練れを数人斬ってしまう。
いろいろあってムゲンとジンは茶屋で出会うなり特に遺恨もないのに斬り合いを始め、さらにいろいろあって二人とも代官の手の物に捕縛されてしまう。
打ち首寸前の二人を救ったのは、フウだった。
二人に、借りを返せと告げ「ひまわりの匂いのするお侍さん」を探すための旅に用心棒として付きあうハメになったムゲンとジン。
こうして、破天荒な三人道中が始まる――。
ギャグとシリアス、アップダウンの激しいストーリー展開
全体のストーリーは、フウの目的「ひまわりの匂いのするお侍さん」を探すロードムービーでクライマックスにはかなりシリアスな展開が待っています。
道中でも、ムゲンの昔の海賊仲間やジンの師匠殺しなど、各自の因縁にまつわるハードボイルドな話があり、それらはきっちりとクライマックスに繋がっていきます。
ところが一方で、ことギャグをやるとなったらとことんやるため、腹を抱えて笑う話が全26話の中にかなりの数、いい割合でテンポ良く配置されています。
一話完結で進んでいく形式が、毎話ごとに切り替えて見やすくしているため、アップダウンでも全く疲れません。
とにかく、ギャグ回がスバラシイ。
籠を質屋に入れると「どうしてもさ、改造籠は安くなっちゃうねえ」と……中古車かよ!
とか
マイクだかなんだかわかんないものを取り出してボイスパフォーマンスしたり。
不良達は広島城にタギングかますし、あげくの果てには日米野球対決(江戸時代ダヨネ?)
どれもこれもキレが素晴らしく、スクラッチプレイのBGMでテンポ良くザッピング展開がされていったり、見せ方がとにかくうまいのです。
ロードムービーの面白さ
三人の旅は一度江戸に向かってからは長崎まで続いていくのですが、各話はそれぞれのご当地ネタが多く、旅から旅への名時代劇
- 水戸黄門
- 三匹が斬る
の流れを見事に取り入れています。
静岡では鰻(うなぎ)ネタが来るし。
広島ではお好み焼きにもちチーズ(江戸時代……)「じゃけえ!」と叫ぶ先生が出てきたときは、広島人としては喝采ものでした。
ロードムービーというのは、話を一話完結で切って手頃な食べやすさで提供するということ。
どんなに無茶をやっても次週には新しい場所に移動するから平気!!
という展開のしやすさにもつながるため、そのせいかこの三人は各方面でやりたい放題やってまわります。
そのハチャメチャっぷりがすばらしいのです。
相変わらずのスタイリッシュな渡辺信一郎演出
カウボーイビバップではハードボイルドを基調としながら、その一方で多彩な演出を見せてくれました。
- 演歌やったり
- ハッキング物をやったり
- マフィアものをやったり
など。
そんな渡辺信一郎監督ですが、基本の立ち位置としてお洒落でスタイリッシュな世界観があったため、それらが際だっていった感があります。
本作でも、ヒップホップ調のOPで始まるこの「色づけ」が格好良く作品の命でもある殺陣シーンはスピード感にあふれてスマートです。
そして、本筋のストーリーで各キャラクターの持つ過去が複雑にからんで緊迫していく様は「ビバップ」の雰囲気を多分に含んでいます。
また、渡辺信一郎作品に頻出する男二人と女一人の三角関係も後半に行くにつれて気配を見せてきますが、この後処理の仕方が素晴らしいのです。
見終わった後の感想は
「とにかく爽やか!これでいい!」
といった感じです。
ドロドロしないし、どのキャラクターに感情移入していたも納得できる。
さっぱりとしたラストシーンは、非常に爽快感溢れるものになっています。
- 面白いものが見たい
- かっこいいものが見たい
という人にはまず、これを勧めたい!というほどに記憶に残る作品でした。