今一度考えさせられるアニメ。『四畳半神話大系』。
一度は見ておくと良いアニメです。
意外と知っている人が少ないのでご紹介しようと思います。
アニメ界の異端児『四畳半神話大系』のご紹介
この作品を知っている人は、それなりのアニメ好きだと思います。
しかしいかんせん知名度の面では一歩及ばず。
ところが、「一度は観ておくアニメ」としては、けっこう上位に食い込む作品なので、ここでもイチオシしたいと思います。
萌えキャラが出るわけでもなければイカスドラマが展開されるわけでもない。
大学のサークル活動というベースはあるものの、珍妙奇天烈な台詞の長廻しがひたすら続くという、一風変わった作りのアニメです。
萌えも燃えもない、クライマックスもなければ起伏もない。
そもそも主人公には名前がなく、一人称の「私」がひたすら喋りまくる。
なのに、好きな人にはたまらないというカルト的なアニメ、それが『四畳半神話大系』です。
なんとかストーリー説明
ストーリーは大学に入学したての主人公「私」がサークルに入って、悪友の小津・ヒロインの明石さん・下宿に長年住む怪人(通称「師匠」)などなどの濃いメンツにかこまれ、大概はろくでもない運命に巻き込まれるというもの。
各話は独立しており、その話の最後に
「こんなはずではなかった、あのとき別のサークルに入っていれば、もっといい大学生活が送れていたのに……」
と後悔したところで時間が巻き戻り、次の話では再びサークル選びから始まるという、いわゆるループもの。
実は繰り返される世界にはいちおうのSF的回答がなされるのですが、ネタバレになるのでここでは割愛します。
一般小説のアニメ化による、作家の秀逸な言語感覚
原作はラノベではない小説で、作者は奇才、森見登美彦氏。
キャラデザインも、原作とほぼ同じで、味のある絵です。
氏の、なんともいえない珍妙な言い回しをアニメに再現すべく、主人公「私」の中の人、浅沼晋太郎がひたすら喋りまくる。
「どこかの深窓の御令嬢と不埒な恋の火遊びをした挙句彼女を部屋に泊め当の彼女は先に目を覚まして昨夜のあやまちに愕然とするあまり本棚に凭れたまま身動きも取れなくなっているのではないか。責任、話し合い、結婚、大学中退、貧乏、離婚、大貧乏、孤独死という一連の流れが走馬灯のように脳裏を駆けた」
「これを読んで涙を流す人がいるとすればそれは感受性が必要までに鋭いか、コンタクトレンズにカレー粉が付着していたかいずれかに違いない。またこれを読んで腹の底から笑うひとがいるとすれば、私はその人を腹の底から憎んで地の果てまで追い親の敵のように熱いお湯を頭からかけて三分待つことであろう」
「小津と知り合ってからの私は安井金比羅宮もかくやとサークル内に張り巡らされた赤い糸を切って切って切りまくった。」
「東に恋する乙女がいれば「あんな変態やめろ」と言い、西に片想いに悩む男がいれば「無駄なことはやめておけ」と助言する。南で恋の火花が散りかけていればすぐさま水をかけてやり、北では常に恋愛無用論を説いた。」
はい、こんなのが延々続きますw
クセがありすぎる登場人物
ほとんど一人で喋っているだけのアニメなのですが、登場人物達もまた、いろいろとインパクトがあります
小津(友人)
人の不幸で三杯はメシが食えるというどうしようもない人間で、「私」に対する影響はすさまじく、無垢で利発(本人談)だった主人公は小津のせいでひねくれ曲がった性格に感化されてしまう。
明石さん
ヒロインで主人公の後輩、「先輩はアホです」が口癖、鳥人間コンテストに参加するバードマンクラブに所属する工学部の学生。
樋口師匠
主人公の下宿に長年住む学生で、一体何年留年しているかわからない怪人。
太平洋戦争以前から続く、不毛な悪戯合戦「代理代理戦争」を友人の城ヶ崎と繰り広げている。
城ヶ崎
映画サークル部長で、学業成績は超低空飛行。
基本的にワンマンで映画サークルに君臨しているが、その性癖は変態そのもの。しかしながら愛する女性(?)と純愛関係にある。
香織さん
物言わぬ深窓の麗人で、城ヶ崎の恋人。その正体は高級ラブドール。
羽貫さん
大学生ではなく、近所の歯科医院に勤務する歯科衛生士。
大学の英語サークルに外部から参加。正確ではないがソウルフルな英語を駆使する。酒癖は最悪。
サークルと物語の舞台
主人公が入部するサークルもまた、変なのばかり。
当初はテニスサークルだったり映画サークルだったり、名前だけはまともっぽいものの、やがてカルト宗教団体「ほんわか」の下部組織であるソフトボールサークルに始まり。
大学の裏で暗躍する秘密結社「黒猫飯店」とその下部組織で、違法駐輪された自転車を速攻で回収して某国へ売り飛ばす「自転車にこやか整理軍」や、学生の偽造レポート作成を請け負う「印刷所」などなど。
また、不定期に出没するラーメン屋台「猫ラーメン」なるものも登場し、主人公の言を借りれば「猫でダシをとっているという噂だがその味は無類である」とのこと。
物語の舞台は京都で、実際の地名が登場するが、これは原作者である森見登美彦氏が、京都大学出身だからかと思われます。
作者にとって土地勘のある舞台が使われる作品には不思議と名作が多く、これは実体験でその場所の雰囲気を熟知しているからかもしれません。
とにかく一話、観てみよう
繰り返しますが、キャッチーな絵柄では決してないし、ドラマチックな展開も皆無ですが、騙されたと思って、一話だけでも観ていただきたい作品です。
一話から全開で飛ばしまくる主人公の長廻しと小津の毒々しい邪悪なキャラクターに惹かれたら、一気に最終話まで退屈しないことは請け合い!
ありきたりのアニメに飽いている方には、お勧めの作品です。